カポーティ

カポーティ
('A`)制作年1999年。
('A`)著者:ジェラルド・クラーク。訳者:中野圭二
トルーマン・カポーティ氏については、今までも何度かブログで作品の感想等を書かせていただきました。2人の殺人者を題材としたノンフィクションノベル『冷血』オードリー・ヘプバーン主演の映画となった『ティファニーで朝食を』この2作は映画と原作両方見させていただきました。それ以外にも、冷血制作時のカポーティ氏を題材とした映画『カポーティ』、この映画のキャッチコピー「誰よりも君の死を恐れ、誰よりも君の死を望む」は最高のキャッチコピーだと思います。
そしてもう1冊、本作と同じくトルーマン・カポーティ氏の生涯を描いた伝記であり、オーラル・バイオグラフィ形式で書かれた伝記の中で、恐らくは最高傑作と言っても差支えはないであろう作品、『トルーマン・カポーティ』を読ませていただきました。
以前に読ませていただいた『トルーマン・カポーティ』でも、本作『カポーティ』と同じくカポーティ氏の生涯、少年時代の南部での思い出から、NYやマンハッタンそして世界で小説家として認められ、そして後に『叶えられた祈り』の中の1節『ラ・コート・バスク』が引き金となり、社交界から見放され、薬物中毒とアルコール中毒と人間関係に苦しみながら死んでいった最後までを描いていたのですが、私の記憶やブログの記事を読む限り、『カポーティ』と『トルーマン・カポーティ』はだいぶ違う内容のように感じます。
『トルーマン~』では、南部での生活もカポーティ氏はそれなりに楽しんでもいて、父親のアーチの事もそこまで憎んでいたわけではなかったように感じたのですが『カポーティ』では、両親が健在なのにもかかわらず、偏屈な親戚に預けられた南部での生活のことをひどく嫌な思い出としており、父親のアーチのは有言不実行の権化のような男と思い、カポーティは全く尊敬していなかったように感じられます。
この手の違いは、物語の全編にわたってちらほらと顔を出しますが、どちらが正しいのかは正確には分からない事でしょう。有名になってからのことならまだしも、子供時代のことなど覚えている人は少ないでしょうから、その少ない人が間違ったことを言えばそれまでなんですから。ただ、個人的には本作『カポーティ』のほうが正しい情報が多いのではないかと思います。
『トルーマン~』では、オーラルバイオグラフィという、インタビューをそのまま文字として載せるような珍しい伝記形態を行っており、同じ場面でも人によって意見が違うことなどが多く(それが魅力でもある)、読み物としては面白いけれど、確かな情報のある資料としては『カポーティ』のほうが信頼ができる気がするのです。
それ以前に、そもそも私が『トルーマン~』の内容を勘違いして覚えている可能性もかなり高いですけど・・・
カポーティ氏を正しく知るという意味では、人にお勧めするべきなのは当然本作『カポーティ』なのですが、本作はカポーティ氏についての知識のみではなく、その交友関係にいたるまでの知識をおおまかにでも持っている方でないと、なかなか難しいと思います。というか難しかったです。
カポーティ氏が愛してやまず、白鳥たちと言っていた上流階級の美人達や、カポーティと同じ年代を生きた著名人たちに関する知識がある方が読めば、私の倍以上この作品を楽しめるのでしょうが、知識がないと、さも皆知ってるよね?といった感じの現れ方をする人たちが多くわけが分かりませんし、急に呼び方があだ名に変わっていたりすると更にわけがわからなくなります。
ですので、私としては最初はぜひ『トルーマン~』の方を読んでいただきたいです。資料としては一歩後れをとるとしても、単純に読み物として抜群に面白いですし、読み終わった後もこちらのほうが良い気分で読み終わることが出来ます。どちらも面白いことには変わりないのですが、とりあえずのおススメとしてはこちらということで。
まぁ、私はこんな伝記読む前に、カポーティ氏の短編をひとつでも読めよって話なんですけどね。
〆
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引っ越し
引っ越しの日が近づいているせいで、DVDを借りれない。
借りれなくもないけど、わざわざ返しに来るのも面倒だし、1週間くらいは借りてたいし、なかなかどうして
そんなこんなで最近はレンタルDVDはおあずけを食らっている状態ですが、
現在公開中の映画『魔女の宅急便』をこないだ見てきました。
かの有名なジブリの作品を実写映画化したもので、公開前のほうが色々と話題になっていたような気がします。ストーリーはほとんど一緒ですが、「魔女が信じられている東の国」と一応日本が舞台というのをはっきり明記したり、登場しないキャラがいたりオリジナルキャラがいたりと、色々ちがうところもありました。
小さい子供が見る分には良い映画なのかもしれませんが、流石に私の好みの映画ではなかったです。色々と粗が気になるところもありましたし、トンボとキキは良いと思いますが、大人のキャラのキャストがどうも原作のイメージとは違いました。とりあえず金曜ロードショーでやる日がくるまで、2回目の鑑賞はないと思います。
というかこれ、2とかやるんですかね?まさかですけど
〆
借りれなくもないけど、わざわざ返しに来るのも面倒だし、1週間くらいは借りてたいし、なかなかどうして
そんなこんなで最近はレンタルDVDはおあずけを食らっている状態ですが、
現在公開中の映画『魔女の宅急便』をこないだ見てきました。
かの有名なジブリの作品を実写映画化したもので、公開前のほうが色々と話題になっていたような気がします。ストーリーはほとんど一緒ですが、「魔女が信じられている東の国」と一応日本が舞台というのをはっきり明記したり、登場しないキャラがいたりオリジナルキャラがいたりと、色々ちがうところもありました。
小さい子供が見る分には良い映画なのかもしれませんが、流石に私の好みの映画ではなかったです。色々と粗が気になるところもありましたし、トンボとキキは良いと思いますが、大人のキャラのキャストがどうも原作のイメージとは違いました。とりあえず金曜ロードショーでやる日がくるまで、2回目の鑑賞はないと思います。
というかこれ、2とかやるんですかね?まさかですけど
〆
マニアック

マニアック
('A`)制作年2012年。制作国フランス。劇場公開作品。
('A`)監督:フランク・カルフマン。出演:イライジャ・ウッド。ノア・アルネデゼール
※以下ネタばれ注意※
あらすじ
ロサンゼルスで両親が経営していたマネキン店を継いだ青年フランクは、淫乱で残忍な母親に育てられたトラウマから、生身の女性を愛することができず、自分が修復したマネキンたちに愛情を注いでいく。やがてフランクは夜な夜な若い女性を殺害し、その毛髪を頭皮ごとはいで自分のマネキンにかぶせるという異常な行動に出始める。そんなある日、フランクの前にマネキンを作品のモチーフに使わせてほしいという女性カメラマンのアンナが現れ……(映画.comより引用)
2012年制作とわりかし最近の映画ではありますが、どうやら1980年の同名映画のリメイク版らしいです。そう言われてみれば、なんかマニアックという名前、以前から知っていたような知らなかったような・・・
この映画をよくあるサイコパスの映画と思い借りた方はある意味がっかりするかもしれません。フランクはこれまでの映画スター達、マイケルマイヤーズやジェイソンのようなモンスター達とはもちろん違うし、レクター博士やノーマンのような殺人鬼とも違うキャラクターだからです。
羊たちの沈黙に出てくるバッファロービルやサイコのノーマンはエド・ゲインにインスピレーションを受けて作られたキャラクターで、ジョジョの奇妙な冒険に出てくる殺人鬼吉良吉影はテッドバンディがモデルになっている(噂?)らしいですが、そういう意味でならこの新たなムービースター・フランク君はジェフリー・ダーマーがモデルと言って良いのではないでしょうか
ジェフリー・ダーマーは1900年代に実在した殺人者で、17人の青少年を殺害したネクロフィリアでカニバリズムで、性的倒錯者ホモセクシャルな男性です。それだけですと、フランクとは殺人者であるというところ以外全く共通項がないように思われるかもしれませんが、私はこの2人は根幹の部分で全く一緒だと思います。
まず、横暴な母に育てられろくな環境で育つことが出来なかったというところが、1つ目の共通項ではありますが、これは殺人者のほとんどに共通していることです。それ以上に、ジェフリーがネクロフィリアであるというところが、フランクのマネキン愛と同じだと私は思います。
ネクロフィリア(死体愛好家)は、死体が好きなのではなくて、相手が生きている状態のままでは自分を愛してはくれないという自身の無さと、そのくせして相手を永遠に自分の物にしたいという独占欲から、死体愛というところに行きつく場合が多いそうです。
ダーマーもネクロフィリアではありましたが、ゾンビ(脳死状態)のような状態にして、自分の傍に永遠に置いておきたいというのが彼の本当の願望でした。フランクは頭髪を皮ごと剥ぎ取った後に自分のマネキンに貼り付けますが、そのマネキンは殺した相手そっくりの姿のマネキンです。そして、髪と言うのは体の中で唯一腐らない部分らしく、彼も形は違えど永遠に相手を独占しようとしての行動だったのです。
つまり彼は、人間以上にマネキンを愛している変態で、マネキンに命を与えるために人の髪をかぶせるのではなくて、人間が好きだけど自分を愛してくれる、愛し続けてくれる女性なんているわけないから、マネキンという形にして永遠に自分だけのものになってもらおうと思い、人を殺していたのです(たぶん)そう思い見ていると、彼が好きなはずのマネキンを簡単に利用させてあげている事も説明がつくでしょう。
作中、フランクが普通の人生に戻るチャンスはいくらでもあります。けれど、そのチャンスもフランクにとっては勝ち目のないギャンブルのようなもので、本当に一緒にいてくれるかも分からない女性に賭けるくらいなら、マネキンにしてしまった方が絶対自分と一緒にいてくれるという考えに走ってしまうのですね。
この映画は、一応スプラッター映画となっているみたいですが、それにしてはその手のシーンはフランクを皮をはぐシーンくらいしかないし、それも額をきりつけただけで皮が剥がれていくといったお粗末なもの。スプラッターというよりは、こう生きる事になってしまった1人の青年の悲劇的なドラマとして見た方が良いと思います。
ただ、ラストは、ラストだけはどうしても疑問に思うところがあるラストでした。全くあのラストでも問題ないと言えばないのですが、私はまったく違う終わり方を想像していたので。
〆
クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ夕陽のカスカベボーイズ

('A`)制作年2004年。制作国日本。劇場公開作品。
('A`)監督:水島努
※以下ネタばれ注意※
あらすじ
路地裏の映画館“カスカベ座”で遊んでいるうちに、映画の中に迷い込んだしんのすけたち。だが、そこはジャスティスなる悪徳知事が支配する西部劇の世界だった。(映画.comより引用)
クレヨンしんちゃんのシリーズの中で私が一番好きな作品が本作です。大人帝国やブタのヒヅメなんかも好きなんですけど、一番といったらこの作品ですねやっぱり。映画の中にはいってしまうという設定のせいで、色々気になるところもありますけど、それらを考慮してもこの作品は良い映画でした。
映画の中に引き込まれてしまった野原一家は、自分たちと同じように映画の中に引き込まれた太ったおじさん(マイク)に色々とこの世界についての説明を受ける事に。この世界では、時間が止まっていて常に日の当たる日中のままで、この世界に長くいるとどんどん春日部にいたころの記憶を忘れていく、この世界には絶対に行ってはならないとされている秘密の場所がある等々を教えてもらい、とりあえずこの世界に住むことになってしまった野原一家。
このあらすじだけだと、大人帝国や野生王国のように、どうせまたひろしやみさえが色々しんのすけの事とか忘れてしまって、春日部防衛隊の面々が色々がんばって敵と戦い、お涙ちょうだい演出でしんのすけの事をひろし達が思いだして家族で敵と戦うんだろうって感じですけど、そうではありません。
そもそもこの映画、子供向けのクレヨンしんちゃんとしてこれはどうなの?と心配したくなるほどに、動きが少ないです。近年のあからさまに子供向けのギャグや演出もどうかとは思いますけど、この映画ではもう少し幼稚園児とかも楽しめるような分かりやすいギャグ入れた方がいいのでは?ってくらいにギャグも動かないようなのが多いですし、後半のドタバタ劇と映画の世界に入ってすぐ以外は大人しい映画だと思います。
とはいえ、流石にそこまで難しい内容やギャグといったわけではなく、小学生くらいならもう十分面白い内容で、酒場でからまれたひろしが「その髭でどうしよってんだ!?」とチンピラにすごまれたり、まさお君とねねちゃんが結婚しててまさお君がすごい尻に敷かれていたり、ミサエがド派手な化粧に乳ボールいれて下手な歌を披露してたり、この年になっても笑ってしまいました。
そういう作品の全体的な雰囲気なんかも好きなんですけど、この映画で一番良いのはやっぱりヒロインのつばきちゃんですね。クレヨンしんちゃんの映画では、よく映画限定のヒロイン的女性キャラがいますけど、大概はしんのすけが好きそうな年上でボンキュッボンな美人。それに性格は勝気で男勝りな強いタイプで、だいたい相手の男がいます。
それに対してつばきちゃんは、年は中学生くらいで特別良い体格でもなく、性格は大人しくて優しいけどやるときはやるタイプ、そして相手の男がいない。そして可愛い。ホントもう、2次元でしか存在しないような女の子です。
この映画は、考察なんかをしようと思えばいくらでも出来そうな作品です。忘れていく中、覚えようとがんばるしんのすけ達や、映画の世界に自分から染まってしまった人たちを難しい目線で、現代社会におけるうんたらかんたら~って見方もたぶん出来る映画でしょうけど、私としてはこの映画は恋愛映画です。そして私が見た恋愛映画の中では、これが一番だと思います。
まぁ恋愛映画ぜんぜん見ないんですけど
〆
天使の分け前

天使の分け前
('A`)制作年2012年。制作国イギリス・フランス・ベルギー・イタリア合作。劇場公開作品。
('A`)監督:ケン・ローチ。出演:ポール・ブラニガン。ジョン・ヘンショウ他
※以下ネタばれ注意※
あらすじ
ケンカの絶えない人生を送るロビーは、恋人レオニーや生まれてくる赤ちゃんのために人生を立て直そうとするが、なかなかまともな職に就けず、またもトラブルを起こしてしまう。服役の代わりに社会奉仕活動を命じられ、そこで3人の仲間と出会ったロビーは、奉仕活動指導者でウイスキー愛好家のハリーからスコッチウイスキーの奥深さを教わり、テイスティングの才能が開花。仲間とともに1樽100万ポンド以上する高級ウイスキーに人生の大逆転をかける。(映画.comより引用)
新作としてレンタル屋に並んだ時からずっと借りたいと思っていた作品でしたけれど、私の行っているところでは1本しか置いておらず、そのくせして人気作品コーナーにずっとあったので中々借りられませんでしたが、先週ようやく人気コーナーから外れ見る事ができました。
私はこの映画をよく行く店の店長さんに紹介してもらいました。その人は『さらば青春の光』などが大好きな人で、その人が紹介する映画ならすごく良い作品に違いないとハードルをひとつあげ、更にレンタル屋でずっと人気コーナーにあったことでまたしてもハードルをあげ、普通に借りるよりも3倍近い期待を持ちながら借りた映画なのですが、残念ながらそのハードルを乗り越える事はできませんでした。
主人公のロビーは、ダメな父親のせいで子供のころからろくな家庭環境で育つことが出来ず、20代前半の時に暴力沙汰で裁判になった時には判事に「君の年齢でこの犯歴は多すぎる」と言われるほどに本人も悪の道に染まっていたのですが、彼女に子供が出来たことと良き大人であるハリーと出会えたことで、まっとうな道に進もうと誓えるほどになりました。
しかし時すでに遅し、まっとうな道に戻ろうと努力してもこれまでの過去の因縁がロビーの体には様々な形でまとわりついていて、その因縁はロビーを離そうとしません。チンピラ共、彼女の父親、昔起こした事件の被害者の親。追い詰められたロビーは一度は断ったウィスキー強盗計画を実行し、そのお金で人生をやり直すつもりで3人の仲間とともウィスキーを盗むための旅へ出発します。
なんでテイスティングの才能に目覚めた後いきなり盗みに出かけてるの?と映画を見た私でも疑問に思うのですけれど、この映画にテイスティングの才能うんぬんは正直あんまり関係ありません。3人の仲間だって重要じゃないし、更に言うならこれから盗もうというウィスキーすらどうでもいいです。この映画はロビーだけいれば他はどうとでも代用できる映画だと思います。
ラストのロビーが去った後の3人や、それ以外のふるまいを見ていると、ロビーと同じことをしていても他3人はどうみてもダメ人間のままなのは分かります。そういう彼らをロビーの近くに作り、まったく同じ行動をさせながらも全然違う考え方や意識の持ち方をあえてさせて、ロビーはすでにこいつらとは違うというのを分かりやすく示してくれたのだと思いますが、それにしても別にこの3人じゃなくても良かったような・・・
かといってロビーがそこまで魅力のあるキャラクターというわけでもありません。というか、そもそもがクズな若者で、子供が出来たから良い人に出会えたからまっとうな道に戻ろうだなんて、都合が良いにもほどがありますし、しかもその手段が盗んだ金でどうにかしようだなんて、魅力があるどころかゲロ以下だと思います。
映画サイトなどでは高評価の多い本作ですが、私としては良くもなく悪くもない作品でした。作品の出来自体はたしかに良かったと思います。この作品を脚本を全く変えずに作るとしたなら、たぶんこれが最高の出来だと思うくらいです。ただ、それならせめて魅力のある何かを1つでも入れてほしかったです。
私が思うこの作品の魅力!みたいのがこの映画にはなかったと思います。
本当に出来はいいんですけどね
〆